平和な様子を意味する四字熟語、それが「鼓腹撃壌(こふくげきじょう)」です。
これはお腹をポンッと叩いてリズムを取りながら歌う老人の姿から来た言葉とされています。
しかし、字面すると少し怖そうなイメージがあるのも事実です。
今回はそれら「鼓腹撃壌」という四字熟語について解説します。
ここではその意味はもちろん、成り立ちや類義語についても併せて説明します。
目次
「鼓腹撃壌」とは
まずは「鼓腹撃壌」という言葉の意味について見てみましょう。
「鼓腹撃壌」の意味
「鼓腹撃壌」とは腹鼓を打ち、大地を叩いて歌うことを言います。
「鼓腹」は腹鼓を打つことを意味する言葉です。
「撃壌」は大地を叩いて歌うことを意味します。
転じて、これらは人民が天下泰平を楽しんでいる様子を表す表現として使用されるようになったそうです。
中でも政治が優秀で人々が平和である様子を指す表現とされます。
字面から少し怖い印象があるように思えるかもしれませんが、実際には悪い意味ではなく良い意味しか含まれていません。
事実、この言葉は安寧の世界を意味する言葉として使用されます。
「鼓腹撃壌」の由来
では「鼓腹撃壌」はどこからきた言葉なのでしょうか?
中国に伝わる故事に登場する老人の姿から
「鼓腹撃壌」は古代中国の故事「十八史略・堯帝」の一句から来ていると考えられています。
そこには「日出而作、日入而息。鑿井而飲、耕田食。帝力何有於我哉。」という一節があるのだとか。
これはある老人が食べ物や飲み物を楽しみながらお腹を叩き、大地を叩いて歌いながら言った言葉とされています。
この言葉には「日が出れば働き、日が沈めば休む。井戸を掘って水を飲み、田を耕して物を食う。帝王の力が何の関係があろうか」という意味が込められているのだとか。
そこから平和な生活がある世の中のことを「鼓腹撃壌」と表現するようになったとされています。
批判的な歌を歌っているように見えるけれど・・・
一見すると「鼓腹撃壌」の成り立ちとなった老人の歌には批判のニュアンスが込められているようにも思えます。
しかし、実際には帝王の力など関係なく人生を謳歌しているような意味合いがあります。
事実、政治などを気にすることなく生活できることこそ本当の幸せと言えるのではないでしょうか。
それら平和な世界について老人は歌っていたのかもしれません。
ただ、逆に「政治がうまくいかないと理想の生活は送れない」という皮肉が込められているという見解もできます。
そこは人によって感想の異なる言葉となりそうです。
「鼓腹撃壌」の類義語
最後に「鼓腹撃壌」の類義語を見ておきましょう。
「鼓腹撃壌」の類義語には「尭風舜雨」や「天下泰平」などがあるとされています。
尭風舜雨
「尭風舜雨」とは穏やかな世の中であることの例えです。
これは尭帝や舜帝のような聖天子の恵みが世間に行き渡っていることを例えた表現となっています。
ちなみに「尭」と「舜」はどちらも古代中国の伝説の聖天子のことを意味する言葉です。
「風」や「雨」はそのままの意味で使用されています。
要は聖天使が善政を行い、人民に恩恵をもたらすことを言った言葉なのです。
そういった点が「鼓腹撃壌」と重なるのではないでしょうか。
天下泰平
「天下泰平」とは世の中が治まっていて穏やかであることの例えです。
転じて、何の不安や心配もなくのんびりと生活している様子を指す言葉として使用されています。
なお「天下」は世の中のことを意味します。
一方で「泰平」は平和であることを意味する言葉です。
つまり世の中が平穏であることを言った言葉となるわけです。
その点が「鼓腹撃壌」に通ずるかもしれません。
まとめ
「鼓腹撃壌」は平和であることを例えた言葉となっています。
これはもともと中国にいた老人が歌った言葉から来ているとか。
特にこの言葉は政治が行き届いていて、誰もが平穏に暮らせていることを意味する言葉として使用されています。