両方を選ぶことはできない状況で使用する言葉、それが「あちらを立てればこちらが立たず」です。
しかし、この言葉はどのような意味があるのでしょうか。
この記事では「あちらを立てればこちらが立たず」がどのような意味なのかを解説します。
目次
「あちらを立てればこちらが立たず」とは
ここでは「あちらを立てればこちらが立たず」の意味を解説します。
「あちらを立てればこちらが立たず」の意味
「あちらを立てればこちらが立たず」は一方を選ぶともう一方の立場がなくなり、両立しがたいことを意味する言葉です。
例えば、どちらか片方に良いようにすれば他方には悪くなってしまうことがあります。
Aさんに媚びを売れば、逆にBさんには喧嘩を売ることになるかもしれません。
このように両方にとって最善な方法が選択できない様子を「あちらを立てればこちらが立たず」と表現します。
「あちらを立てればこちらが立たず」の用い方・例文
「あちらを立てればこちらが立たず」は2つに1つの選択を迫られるも、両方にとって最善の方法が選べない場合に使用します。
・例文1:親友2人から遊びに誘われたが、あちらを立てればこちらが立たずでどちらを選ぶこともできないでいる。
・例文2:仕事ができない社員ばかりの面倒を見ていては他の社員の面倒を見ることができない。まさにあちらを立てればこちらが立たずである。
・例文3:A社の修正ばかりでB社の案件に着手できていないというのは、あちらを立てればこちらが立たずの状況ではなかろうか。
このようにどちらか一方の選択を迫られている場面にあるものの、どちらも選べないような状況で「あちらを立てればこちらが立たず」を使用します。
単に選べないというよりは、両方にとって最善策が見つからないような状況を指して使用します。
要は2つのうちどちらを選んでももう一方に対して義理を欠くような状況で使用する言葉といえるでしょう。
「あちらを立てればこちらが立たず」の類義語①
ここからは「あちらを立てればこちらが立たず」の1つ目の類義語を紹介します。
彼方を祝えば此方の怨み
「彼方を祝えば此方の怨み」は誰かの幸福は誰かの不幸になり、双方にとって最善となるようにするのが難しいことを意味する言葉です。
誰かにとって幸福なことは一方の誰かにとっては不幸となることがあります。
双方にとって最善の方法を選んだつもりでも、結果として幸福と不幸の両方が存在してしまうような場面を意味します。
その点が「あちらを立てればこちらが立たず」と同じです。
頭押さえりゃ尻上がる
「頭押さえりゃ尻上がる」は片方がうまくいけば他方がうまくいかなくなり、両方ともうまくいくことは稀であることを意味する言葉です。
要はすべてうまくいくことなどほとんどないことを指す表現となります。
実際に頭を抑え込もうとすれば尻が持ち上がるように、物事もどちらか一方がうまくいけばもう一方はうまくいかないものという意味となります。
その点が「あちらを立てればこちらが立たず」と似ています。
「あちらを立てればこちらが立たず」の類義語②
ここからは「あちらを立てればこちらが立たず」の2つ目の類義語を紹介します。
出船によい風は入り船に悪い
「出船によい風は入り船に悪い」は一方にとって良いことは一方にとって悪いことであるという意味の言葉です。
両方にとって都合がいいことはそうそうないことを指します。
この言葉は出港する船にとっての追い風は入港する船にとっての向かい風となるところから来ています。
実際に追い風は出向する船にとっては良いものですが、入港する船にとっては悪いものです。
転じて、どちらにとっても最善なものはないということを意味します。
その点が「あちらを立てればこちらが立たず」に通じます。
痛し痒し
「痛し痒し」は2つの方法のどちらを選んでも具合が悪く、どうすべきか迷ってしまうことを意味する言葉です。
具合が良い場合もあれば具合が悪い場合もあることの意味で使用します。
この言葉はかけば痛いもののかかないと痒いという状況から来ています。
そのもどかしい状況を指して使用するのが「痛し痒し」です。
その点が「あちらを立てればこちらが立たず」と重なります。
まとめ
「あちらを立てればこちらが立たず」はどちらも選び難いような状況で使用する言葉です。
現代社会でもどちらか一方にとっては良いことでも、もう一方にとっては悪いことになる場面というのは多々あります。
それでもどちらかを選ばなければならない状況を指して「あちらを立てればこちらが立たず」と表現します。
日常生活でも使用できる言葉なので、ぜひ覚えておきましょう。
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