
空を舞う動物というと、空を飛ぶ鳥か、モモンガやムササビのような滑空するリスの仲間を思い浮かべるのが一般的です。
しかし、他にも空を滑空する動物がいます。
それが「ヒヨケザル」です。
このヒヨケザル、モモンガたちよりも滑空するための進化が実は進んでいるのだとか。
そこでここでは、そんな空を舞う「ヒヨケザル」がどのような動物なのかについてご紹介します。
併せてモモンガなど他の空を飛ぶ生き物とはどう違うのかなどもご紹介しますね。
目次
おサルさんが空を舞うって本当?
おサルさんというと、私たち人類と同じ霊長類の一種ですので、道具を用いず空を舞うなんて到底信じられません。
ところが、「ヒヨケザル」という動物は、滑空能力があるので空を舞う事ができるのです。
飛膜のあるヒヨケザル
ヒヨケザルに分類される動物には、飛膜と呼ばれる伸縮性かつ弾力性のある膜があります。
これを広げることで、高所から飛び降りた際に空を舞うことができます。
その飛膜はモモンガたちより発達している!
鳥意外に空を飛ぶ動物というと、ヒヨケザル同様に飛膜を持つモモンガやムササビを思い浮かべる人も多いと思います。
ヒヨケザルは、このモモンガやムササビよりも発達した飛膜が発達しています。
モモンガの飛膜は前脚と後脚の間の胴体部分のみで、ムササビは更に後脚と尻尾の間にも飛膜があります。
ヒヨケザルはムササビよりも飛膜が発達しています。
前脚と首の間、そして各指の間に飛膜があります。
実はおサルさんではない?
ヒヨケザルは名前にこそサルと入っていますが、厳密にはサルの仲間では無いともされます。
私たち人類ことホモ・サピエンスやニホンザルは霊長目に分類されています。
それに対し、ヒヨケザルは皮翼目という種類に分類されています。
つまり、霊長目とは別物の独立した種という事になります。
なので、厳密にはおサルさんでは無いという事になります。
また、非常にあいまいな扱いをされた歴史があり、滑空することからコウモリをはじめとする翼手目とも、モグラをはじめとした食虫目ともいわれたことがあります。
存在としては、霊長目と食虫目の間の存在とされることもあります。
ヒヨケザルはこんな動物
サルと名前を冠しておきながらも、実はサルの仲間ではないヒヨケザル、一体どのような生態をしているのかご紹介します。
ヒヨケザルと呼ばれる種は2種類
ヒヨケザルと呼ばれるのは、フィリピンヒヨケザルとマレーヒヨケザルの2種類です。
いずれもその最大の特徴は首から手足、そして尾の先にかけて飛膜があります。
フィリピンヒヨケザル
フィリピンヒヨケザルは、フィリピンの島々に生息しており、体長が30cmから40cm程度、体重1~1.75Kgほどです。
頭は体に比して小さく、キョロっとした丸く大きな目をしています。
マレーヒヨケザル
出典:Wikipedia(©Nina Holopainen)
マレーヒヨケザルは、マレー半島をはじめインドシナ半島やその周辺の島々に生息しています。。
その体はフィリピンヒヨケザルと同等で、体長が大きいもので40cmほど、体重は1~1.5kgほどとなっています。
背面の毛衣は暗褐色をしているのですが、毛先が白いためまだら模様のようにも見えます。
ヒヨケザルの食性
夜行性のヒヨケザルの好物は木の高いところに生える若葉です。
それもあって、樹上生活を好みます。
木の葉を消化することができる発達した胃を持ち、若芽や花や樹液なども食します。
また、果実も食べているのではないかと考えられています。
謎の多いヒヨケザル
ヒヨケザルは非常に憶病な動物のため、研究が進んでいません。
クシのような形状に前歯が発達しているのですが、これが何の役割があるのかも判明していませんし、生物としての活動についても多くの謎が残されているそうです。
オスとメスの関わりも、他の動物との関係も謎となっています。
実際のところ、ヒヨケザルに関する最初の論文が出たのが1990年頃と、まだ研究が始まったばかりの動物だったりします。
そのため、これから研究の余地が多いという事なので、今後新たに判明することが続々出てくるかもしれません。
滑空するムササビやモモンガとの違い
滑空する動物と言えばムササビとモモンガが代表的です。
そこで、ヒヨケザルとの違いについてご紹介していきます。
大きさの違い
ヒヨケザルの大きさは、前述のとおり30cm~40cmほどとなっています。
それに対して、ムササビは約25cm~50cmほどなので、ヒヨケザルより小さい個体もいる一方、一回り大きい個体もいます。
ヒヨケザルよりも小さく、モモンガは約15cm~20cmほどで手に乗るほどの大きさをしています。
ちなみに、ムササビの大きいものとモモンガでは体重も10倍ほど違うそうですよ。
生息地の違い
ヒヨケザルはフィリピンやマレーシアなどの東南アジアの生き物です。
しかし、ムササビは本州・四国・九州など日本に生息する固有種です。
そして、モモンガはオセアニアからアジアまでの世界中に生息しています。
滑空能力の違い
ヒヨケザルは100m以上飛ぶこともあり、ムササビやモモンガよりも滑空能力が高いとされます。
ムササビが約100m、モモンガは約2m~30mとされています。
ムササビは個体によってはヒヨケザルと同程度滑空できるようですが、モモンガはそれに比べるとあまり滑空が得意ではないようですね。
まとめ
滑空する動物というとムササビやモモンガが有名ですが、他にも「ヒヨケザル」という動物も滑空能力を有しています。
むしろ、ムササビやモモンガよりも滑空能力は高いのだとか。
名前に「サル」とは言っていますが、正確に言うとサルの仲間ではなく皮翼目という独立した動物となります。
生態に関してもわからないことがまだまだ多く、研究もまだ進んでいません。
関連記事はこちら
手足と尻尾が長い「クモザル」は、樹上生活に適用するための進化をしたおサルさん