
多くの日本人から愛されている国民的食べ物、お寿司。
街中には、老舗のお寿司屋さんから、回転寿司や配達専門などチェーン展開しているお寿司屋さんまでたくさんありますね。今や海外でも人気で「SUSHI」として世界に拡がり、親しまれているほどです。
ところで、お寿司の漢字には「寿司」と「鮨」があることをご存知ですか? はたして、この二つの「すし」には何か違いがあるのでしょうか? もしくは使い分けのルールがあるのでしょうか? 今回は、そんな「すし」の謎に迫り、起源や歴史についても解説していきます。
目次
「すし」の歴史
「すし」の歴史を遡ると、紀元前4世紀ころの東南アジア山地民族にたどり着きます。紀元前4世紀ころの日本といえば、水稲農耕技術の社会が成立したといわれている、弥生時代早期と呼ばれる時代です。
元は保存食だった
この頃から東南アジアでは水稲農耕が盛んで、米を食べる文化でした。まだ冷蔵庫などない時代、米を炊いて食べることをくり返すうちに、自然の恵みと偶然が重なり米を発酵させることを学びます。そこから、米の発酵を利用した魚の保存方法が生み出されたのです。米を炊いたものと魚を一緒に漬けておけば、米が発酵するのと同時に魚も発酵し保存食となり、長く食べられるというわけです。この保存食が、米と魚を一緒に食べる「すし」の原型といっていいでしょう。元々は先人の知恵から生まれた保存食を作る技だったんですね。
日本で馴れずしの誕生
この技術が中国から日本に伝わったのは、奈良時代(710~794年)だといわれます。日本では米飯にアユなどの川魚を乗せ、一晩寝かせることで乳酸発酵させた「馴れずし」が日本の「すし」の始まりでした。乳酸発酵させているので酸味があり旨味を引き出す効果もあります。
この「馴れずし」の歴史は、作り方を発展させながら主に西日本中心に室町時代まで続きます。現在の「箱ずし」や「押しずし」は「馴れずし」の進化形なんです。
江戸前鮨の誕生
安土桃山時代になると調味料の「お酢」が作られ、酢飯を食べるようになりました。そこから更に発展し、江戸時代後期、江戸の郷土料理といわれる「江戸前鮨」が誕生しました。この頃、新鮮な魚を客の前で握って提供する「握りずし」の屋台が流行したんですね。江戸前浜の海(現.東京湾)でとれる魚介や海苔を使う「握りすし」のことを「江戸前鮨」と呼び、ポピュラーな食べ物として江戸の町に広まりました。当時の握りずしは今よりもずっと大きく、拳一つ分ほどあったそうですよ。
出典:Wikipedia
すしの全国的な広まり
そこから更に「すし」が日本中に広まったのは、大正12年(1923年)の関東大震災がきっかけでした。被災した東京のすし職人たちが故郷へ帰ったことによって江戸前鮨の技術と味が日本中に広まったのです。
現在は、屋台で生ものを扱うことが禁止されていますが、屋台で食べる握りずしなんてとても乙ですね。一度味わってみたかったものです。
このようにして日本中に広まったすしは、現在では世界中に広まっていったんですね!歴史が分かったところで、気になる「すし」の表記「鮨」と「寿司」の違いについてみていきましょう!
漢字「鮨」の由来
寿司と鮨。まずは「鮨」の由来です。
元は鮓の字を使った
「鮨」ではなく、「鮓」と書かれることもあります。
実は「すし」の漢字の中で、もっとも古い表記が「鮓」なんです。現在でも馴れずしの伝統が残る関西では「鮓」が使われることもあります。
鮨は中国で魚の塩辛に使われた漢字
「鮓」の次に古い表記は「鮨」になります。
「鮨」は、元々 中国で「魚の塩辛」を意味する漢字として使われていました。馴れずしを指す「鮓」の漢字に似ていますよね。どちらも魚を使った食べ物ということから、混同していったのでしょう。どちらも同じ「すし」を表す漢字として使われるようになりました。
「鮓」「鮨」の表記は、「正倉院文書(しょうそういんぶんしょ・奈良時代の情報を含む文書群)」などでも見られます。
江戸前鮨で使われるように
「鮨」は馴れずし以外の握りずしでも使いやすいことから、江戸前鮨で使われるようになりました。この流れから江戸前系の「すし」は「鮨」表記の傾向にあります。
漢字「寿司」の由来
出典:Wikipedia
では「寿司」の由来は何だったのでしょう?
江戸時代に縁起を担いだ当て字として誕生
現在、多くみられる「寿司」という表記は、江戸時代末期に作られた当て字です。
その名の通り「寿を司る」と、縁起のいい文字を並べて「寿司」です。また、朝廷への献上物の中に「すし」があったことから、賀寿の祝い言葉である「寿詞(じゅし、よごと)」に由来しているともいわれています。
じゅ し [1] 【寿詞】
賀寿の意を述べた詩歌や文章。よごと。
よ ごと [1] 【寿▽ 詞▽・吉▽言】
① 天皇の治世が長く栄えるようにと祝う言葉。賀辞。 「巨勢大臣をして-奉らしめて曰さく/日本書紀 孝徳訓」
② 祈願の言葉。 「 -を放ちて起ち居、泣く泣くよばひ給ふ事/竹取」
出典:weblio.jp
現代では最も一般的
現代では「寿司」が最も一般的であり多く使われています。それは、「すし」の種類やネタを問わずに使えるからです。「鮨」は、魚以外の「すし」には使いにくいですが、「寿司」はどんな「すし」にも当てはまります。たとえば「ちらし寿司」「いなり寿司」「回転寿司」など、魚以外の「すし」にも使える表記です。
寿司と鮨の使い分け
基本は同じ意味なのでどちらでも良い
「寿司」と「鮨」。基本は同じ意味なので、どちらを使っても間違えではありません。使う側(お店側など)の判断で決めて良いのです。
いなり寿司など魚を使わない場合は寿司
決まりはないですが「寿司」と「鮨」が使い分けとしては、ネタに魚を使っていない「すし」には「寿司」、魚を使っている「すし」には「鮨」というところでしょう。
例えば、「いなり寿司」「手巻き寿司」などの魚を使っていないもの、または「回転寿司」といった業態を示すときには「寿司」が相応しいですね。そして、「握りずし」や「押しずし」など生の魚や、魚を発酵させてつくられるものに対しては「鮨」が使われる傾向があるようです。
まとめ
「鮨」と「寿司」の違いや歴史について、お分かりいただけましたでしょうか?
世界から注目されている日本食に相応しいほどの歴史と奥深さがありましたね。馴れ鮓、箱鮨、押し鮨、握り鮨と、いつの時代も人々から求め続けられてきたお寿司。これからも形を変え進化しながら世界中に根付いていくのでしょうか。新しいお寿司も昔ながらのお鮓も味わいたいと思うのは、贅沢な楽しみでもありますね。
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