日本の小学生の定番アイテムであるランドセル。実はオランダから輸入されたということをご存知でしたか?しかも初めは大人が使用するために輸入されたカバンだったのです。
なぜ日本でこれほどまで普及し、小学生の定番アイテムとなったのか?そして現在、海外では大人たちが使用しているというのは本当なのか?今回は、そんなランドセルについて解説いたします。
目次
元々はオランダ語の「ransel(らんせる)」が語源
ランドセルの語源は、なんとオランダ語だったんです。
オランダ語の背負いかばん「ransel(らんせる)」
オランダ語では、背負いカバンのことを「ランセル(ランヌル)」と呼んでおり、日本に入ってきてから訛り「ランドセル」と呼び方が変わっていったのです。
日本に入ってきたのは幕末
江戸時代(1603~1868年)の末期(幕末)に、「ランセル」として輸入されました。
兵士の背嚢(はいのう)用に輸入
元々は、軍人が使用するために輸入されたもので、布製の背嚢(はいのう、バックパック)でした。
江戸時代末期、幕府が洋式軍隊制度(幕府陸軍)を編成するときに、このオランダ式背嚢も一緒に取り入れたことがランドセルの始まりです。当時の日本は鎖国(政府が他国との交通・貿易を禁じること)をしており、唯一オランダが交易している国だったんですね。
兵士の持ち物を収納するため配布されたこの「ランセル」は日本軍人の中で広まっていきました。ランセルの中には食料や生活用品、銃や弾薬などが入れられ、重さは30キロを超すほどだったとか。とても丈夫な布製の背嚢だったことが考えられます。
学校で使われ始めた最初は学習院初等科
出典:Wikipedia
軍人ご用達のカバンから、小学生の通学用カバンとして使われるようになったのは、それから20数年後の明治18年(1885年)のことです。
馬車・人力車での通学禁止から
明治18年、学習院は教育の場では皆平等ということと、子ども達の体を鍛えることを目的に、子ども達が自分で荷物を持って徒歩で登校することを決めました。それまでは、馬車や人力車で登校したり、荷物は使用人が持ったりしていたんですね。
丈夫で両手が空く通学カバンとして背嚢が導入されましたが、当初はまだ布製のリュックサックのような形をしていました。
革製のランドセルの最初は伊藤博文が大正天皇に献上
明治20年(1887年)、後の大正天皇が学習院初等科に入学する際、当時の総理大臣だった伊藤博文がお祝いとして革製の箱型ランドセルを献上しました。これが現在のランドセルへと改良されていきます。
現在でも標準のランドセルを学習院型と呼ぶ
現在でも、標準型のランドセルを学習院型と呼んでいます。
ランドセルの形を大きく分けると「学習院型(標準型)」と「キューブ型(スクエア型)」の二種類で、ヘリ巻きという部分があるかないかの違いです。ヘリ巻きがあるのが「学習院型(標準型)」。ヘリ巻きがないのが「キューブ型(スクエア型)」になります。どちらもメリット・デメリットがあり、学習院型は耐久性が強いけど内容量が小さい、キューブ型は大容量だけど耐久性が弱い、といわれています。
日本での普及
出典:Wikipedia
日本全国へ普及していったのは、いつからなのでしょう?
普及は昭和30年以降
革製の箱型ランドセルは高価なものだったので、持っているのは都市部の富裕層の子ども達に限られ、地方や一般庶民の子ども達は、風呂敷や安価な布製バッグを使用していました。一般庶民まで普及されたのは、高度経済成長期(昭和30年、1955年)以降です。この頃から、国全体に活気が出て人々の生活も豊かになっていくのです。
現在のランドセルは日本発祥
オランダから輸入されたランドセルですが、日本発祥と言っていいのでしょうか?
通学用かばんとして進化したランドセルは日本から
オランダから輸入された当初は、兵士用の布製の背嚢でした。そこから形や使い道、使用対象者が変わり、通学用カバンへと進化していったことから、現在のランドセルは日本発祥と言っていいでしょう。
ランドセルといえば赤と黒
なぜランドセルの定番色は赤と黒なのでしょう?これには二つの理由があります。
一つ目の理由は、牛革をムラなく染色するには黒や暗めの赤が適しているからです。天然牛革は均一に染色することが難しい材質なので、他の色だと美しく染色することができないのです。
二つ目は、男女の区別が一目でできるようにということです。どちらも頷ける理由ですね。
カラーバリエーションが増えたのは2000年ごろ
最近では、カラーバリエーションが豊富でランドセルを選ぶ楽しみがありますね。カラーバリエーションが増えたのは、平成12年(2000年)ころです。人工皮革の登場で開発が進み、これまで染色しにくかった赤と黒以外の色でも美しく染色できるようになったからです。
海外ではおしゃれアイテムとして人気!
日本では小学生の通学用カバンとして浸透していますが、海外ではセレブを中心としたファッションに敏感な大人たちが持つバッグとして人気があります。
女優ズーイ・デシャネルさんが愛用し人気に
ランドセル人気に火をつけたのは、アメリカ女優のズーイー・デシャネルさん。
2014年、ズーイー・デシャネルさんが自宅前でパパラッチに撮影された写真が出回りました。その時のズーイー・デシャネルさんは、ベージュのトレンチコートに赤いランドセルを片方の肩で背負うという斬新なファッションをしていたのです。この写真を見た若者たちが「あのバッグはなに?」と口コミで広まっていったのです。
ファッションショーやファッション雑誌ではなく、プライベートで撮られた一枚の写真がきっかけだったとは、それ程ズーイー・デシャネルさんのファッションセンスが抜群だったということでしょう。
現在では訪日した外国人が持ち帰るお土産の定番になっており、空港や外国人向けのお店でも販売されているほどです。
かわいくて丈夫だから
近年のランドセルは、カラーバリエーションが増えかわいい装飾がされているのもあり、オシャレになりましたよね。カジュアルなリュックより革製のランドセルを背負った方が大人のファッションにも合いそうです。それだけではなく、小学生が6年間ほぼ毎日使用することを想定して作られているため、頑丈で機能性も抜群なんです。
アニメの影響
日本のアニメは、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、ロシアなど世界的に人気があります。アニメを見た外国人がランドセルの魅力に気付き、人気に拍車をかけているのです。
まとめ
江戸時代にオランダから輸入されたランドセル。長い年月を経て小学生の定番アイテムという位置を獲得し浸透させてきました。
現在、海外では大人たちがファッションの中に取り入れているんですね。日本でも小学生が使うものだという先入観を捨てて、今一度ランドセルを見直し、ファッションアイテムとして楽しむのもいいかもしれません。ランドセルならではの細部まで拘った機能性を味わったら、もう手放せなくなるかもしれませんよ。
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出典:Wikipedia