片思いをしている状態のことを「鮑の片思い」と表現することがあります。
これは、片思いなので片方だけが恋心を抱いている状況を指す言葉です。
ここでは、この「鮑の片思い」という言葉についてその意味や由来、類義語について見ていきましょう。
目次
「鮑の片思い」とは
まずは「鮑の片思い」の意味や由来について見ていきましょう。
ちなみに、性格な表現は「磯の鮑の片思い」となりますよ。
「鮑の片思い」の意味
「鮑の片思い」とは、片思いをしている状態をあらわす語句です。
どちらか片方だけが恋心を抱いている、そんな感情と関係性を意味しています。
「鮑の片思い」は、恋の病に落ちた様子の形容として使用されます。
由来は鮑の形状から
「鮑の片思い」は、鮑の形状から来た表現です。
鮑は一枚貝ですが、二枚貝の片方もしくは片側だけになっているかのような形状をしています。
そのため、対となる貝の部分がありそうだとその姿を例えたことで生まれたのが「鮑の片思い」という言葉となっています。
万葉集にも詠われている「鮑の片思い」
「鮑の片思い」という言葉の歴史は古く、現存するものの内日本で最古とさせる歌集となる「万葉集」の一首で使われています。
詠み人知らずの一句
奈良時代後期にまとめられた和歌集「万葉集」には、詠み人知らずつまり作者不明の一首に「鮑の片思い」に通じる言葉が使われています。
伊勢の海女の朝な夕なに潜くといふ鮑の貝の片思にして
この一首は、「伊勢で海人として働く人が朝方や夕方に海に潜って採取してくるという鮑のように、私は片思いをしている」という状況を詠っています。
「鮑の片思い」と同じく片思いしている様子で用いられる言葉
最後に「鮑の片思い」と同じく、片思いを表す表現について見ていきましょう。
おかぼれ
「おかぼれ」とは、人知れず密かに恋心を抱いている状況をあらわす言葉です。
他人の恋人や親しくもなければ交流もしていない相手に対して、ひっそり恋をしていることを言います。
漢字表記は「丘惚れ」や「傍惚れ」などとなります。
懸想
「懸想」は、恋い慕うことをあらわす言葉です。
恋とまではいえなくとも、思いを寄せる事も指します。
愛屋及烏
「愛屋及烏」とは、偏っているほど愛が深い様子をあらわします。
偏愛や溺愛、とも表現できます。
その人を愛するあまり、その人の家の屋根にとまっているカラスさえも愛おしくなる、恋の状態や心理描写となります。
語順を入れ替えて「愛及屋烏」や「屋烏之愛」と表現されることもあります。
まとめ
「鮑の片思い」は片思いを意味する言葉です。
この表現は、海産物の鮑が一枚貝ながら二枚貝のように見えるという形状から生まれた言葉とされています。
歴史のある言葉で、奈良時代の後半に編纂された和歌集「万葉集」にすでに類似の表現が出てきています。