極めて近いことを「一衣帯水(いしいたいすい)」と表現します。
これは1つの河川や海峡で隔てられている陸を意味します。
しかし、なぜそれを「一衣帯水」と言うのでしょうか?
ここではそれら「一衣帯水」について解説します。
特にここではその意味はもちろん由来や語源、類義語などについても説明します。
目次
「一衣帯水」とは
まずは「一衣帯水」が持つ意味について見てみましょう。
「一衣帯水」の意味
「一衣帯水」とは極めて近接していることの例えです。
「一衣帯」は1つの帯のことで細く長いことの例えです。
「水」は河川や海峡など陸を隔てる水の例えとなります。
これらの意味からもわかるように、もともとは一筋の帯のように細く長い河川や海峡のことを指す言葉でした。
転じて、両者の間に狭い隔たりしかない状態を言うようになったとされています。
平たく言えば、ある2つのものが接近している状況を意味する四字熟語と言えるでしょう。
もっと簡単に言うなら、くっつきそうなくらいとても近いことの例えとなります。
隣接・親しい関係の意味もある
「一衣帯水」は物事だけでなく人間などの関係も意味することがあります。
本来は細長い河川や海峡を隔てて近くにある物事を指します。
しかし、人間同士の距離が近いことも表す表現でもあるのです。
ちなみに物理的に近いだけでなく親しいことも意味します。
そのため、多種多様な場面で使用できる四字熟語だと言えるかもしれません。
「一衣帯水」の成り立ち
ここからは「一衣帯水」の成り立ちについて見てみましょう。
ここではこれらの由来や語源についてまとめます。
隣国を攻める理由から
「一衣帯水」は古代中国の歴史書「南史-陳後主紀」から来ています。
その昔、隋という国に文帝という皇帝がいました。
その隋の隣国には陳という国があったそうです。
当時、陳の皇帝は大変暗愚な君主として君臨していました。
それによって民衆は困窮し、国力も衰えていたのだとか。
文帝はそれら隣国の陳を救うべく、攻め入ることを決意します。
その際「一衣帯水を隔てた隣国の民衆が苦しんでいる」と言い、民衆を救うために戦ったとされています。
実際にこの言葉は両国が非常に近い距離もしくは関係にあることを表現した言葉と言えるでしょう。
転じて、両者が近いことや親しいことを意味する言葉として「一衣帯水」が広まったとされています。
現代でも二国間の距離や関係を言う際に「一衣帯水」と表現されることがあります。
その後中華を統一した隋
隋は陳を攻めて、結局どうなったのでしょうか?
これに関しては結局、隋の文帝が陳を滅ぼし全国を統一に導いたとされています。
現代でもこれらの話は中国で度々耳にします。
それくらい歴史的に見て大きな出来事だったと言えるでしょう。
「一衣帯水」の類義語
最後に「一衣帯水」の類義語についても見てみましょう。
「一衣帯水」の類義語には「一牛吼地」や「寸歩不離」などがあります。
一牛吼地
「一牛吼地」とはとても近いことを意味する四字熟語です。
これは1頭の牛の鳴き声が聞こえるほど近いことを言った言葉となります。
それら非常に近くにあることを意味する表現となります。
その点が「一衣帯水」と似ているのではないでしょうか。
ただし「一牛吼地」にはのどかな田舎という意味もあります。
単なる田園風景を形容する言葉としても使用されるので注意したいところです。
寸歩不離
「寸歩不離」とはすぐそばにいることを意味する四字熟語です。
「寸歩」は極めて少しの歩みのことを意味します。
「不離」は離れることがないことを意味します。
つまり少し近づけば触れるくらいに密接なことを指すのです。
これらは単に一歩も離れないことの形容として使用されることもあります。
それらの点が「一衣帯水」と同じと言えるかもしれません。
ただし「寸歩不離」には仲睦まじいという意味もあります。
そこは微妙に意味が違ってくるので注意しましょう。
まとめ
「一衣帯水」とはとても近いことを意味する四字熟語です。
実際に1つの河川や海峡で隔てられているものの、すぐに渡れてしまうような距離にあることを言った言葉となります。
これらは古代中国で生まれた言葉とされています。
ただし、近年は単に近いというよりも親しいというような意味で使用されることもあります。
そこは物事だけではなく人間も対象となるということを覚えておきましょう。