
人を嘲ったりする表現の1つに「甚六」という言葉があります。
これは「総領の甚六」と呼ばれる表現の略となります。
この言葉、悪口とする際は、ある特定の人をあらわすとされます。
では、どのような人を指すのか。
ここでは「甚六」がどのような人に対して用いられる表現なのかをご紹介します。
また、その語源についても見ていきましょう。
目次
「甚六」とは

まずは、「甚六」や「総領の甚六」と呼ばれるのはどのような人なのかを見てみましょう。
「甚六」と呼ばれるのは・・・
甚六は、「総領の甚六」の略です。
この総領とは、家の跡目を継ぐべき人や家を継ぐ長男のことを意味します。
甚六は、「順禄」が転じたものと考えられています。
順禄とは、世襲制度により先に生まれた子、つまり長男が後を継ぐという制度をあらわしています。
「総領」も「甚六」も、どちらも古くは家を継ぐ存在とされた長男を指しているという事になります。
「甚六」の由来
生まれた時から、成長すれば跡を継ぐとされ、大事にされてきた長男。
古くは、そんな長男はのんびり屋で世間知らずに育つとされました。
この性格を強い言葉で表現した「甚だ(はなはだ)ろくでなし」これを略して「甚ろく」となり、さらに人物名風に変更して「甚六」となったともされています、
人を揶揄する「総領の甚六」

総領の甚六は人を嘲る際に使用される言葉です。
ここからは特に総領の甚六という表現についてまとめます。
「総領の甚六」と揶揄されるのは・・・
総領の甚六は、世間知らずでおっとりした性格の長男を指します。
特に弟や妹のほうがしっかりしている際に用いられることがあります。
前述のとおり、古くは長男というのはマイペースで世間知らずに育ちやすいとされまました。
そこから、その性格を揶揄する際に用いられる言葉となりました。
また、長男という存在自体を揶揄する際にも用いられます。
「総領の甚六」の類義語

ここからは、「総領の甚六」の類義語についてまとめます。
ろくでなし
ろくでなしは、のらりくらりしていて役に立たない人のことです。
怠けている人や性根が歪んでいる人をあらわすことが多いです。
また、くだらないことをする人という意味でも用いられます。
近年は、世間知らずな人のことを指すこともあります。
侮辱や軽蔑のニュアンスが強い言葉です。
もともと「ろく」とは「陸」のことを指していました。
陸とは平らなものです。
そこから、まじめさやまともさという意味をあらわしています。
ということから「ろくでなし」は、まじめではない、まともじゃないという事になるというわけです。
この「陸でなし」の「陸」が時を経て、「碌」という当て字として広まり現在の形になりました。
ドラ息子
ドラ息子は、やんちゃが過ぎたり、素行が悪かったりする息子のことを揶揄する言葉です。
同じような言葉としては道楽息子や放蕩息子があります。
どちらも、働かずに親のすねをかじりながら遊びほうける人をあらわす言葉となっています。
このドラ息子は、江戸時代に広まった表現とされます。
怠けたり放蕩することを、当時は「ノラ」と言っていました。
そして、これの強調表現が「ドラ」だったことから「ドラ息子」という表現になったともされます。
まとめ
「甚六」は、「総領の甚六」を略したものです。
総領も甚六もどちらも家を継ぐ長男をあらわしています。
かつては、長男というものは大切に育てられ特に苦労も覚えていないのでおっとりした性格の世間知らずとされていました。
そこから、「総領の甚六」は世間知らずのお人よしな長男を揶揄する表現として用いられるようになりました。
類義語には「ろくでなし」や「ドラ息子」などがあります。